インターネットの三角コーナー

生ゴミのような記事を書いたり書かなかったりします。

友達の家の日本酒の瓶に小便を入れた話

はじめまして。しがないサラリーマンをしている32歳、のりおと申します。「セミみたいな匂いがするね」と二人の女性から言われたことが自慢です。

突然ですが、皆さんは友達の家の日本酒の瓶に小便を入れたことがあるだろうか。

「なに言ってんだこいつ」と思うかもしれないが、残念なことに今回のテーマは友達の家の日本酒の瓶に小便を入れた話なので、1ミリもそそられない方はパソコンやスマホをぶっ壊すなどして見ないことをお勧めします。

あれは小学校時代の話。仲のよかったA君という友達がいて、彼の家によく遊びに行っていた。もちろん家に遊びに行っていたのは僕だけではなく、家の中に入ると他の友達が既にゲームで遊んでいる、ということも多々あった。
A君は人柄がよく好かれる要素はたくさんあったと思うが、何よりファミコンのソフトを多く持っていたのだ。当時は所持しているファミコンソフトの数の多さでヒエラルキーが決まるような風潮すらあったような気がする。
そんなわけでA君の家には多くの友達が出入りしていたのだが、一つだけ問題があった。A君の親父がクソなのだ。
友達の親父をクソと言うのは余りにも失礼なのだが、本当にクソなのだから仕方ない。


・なぜか昼間から家にいる。しかもめちゃくちゃ酔ってて、たまに口臭を嗅がせてくる
・息子の友達に「まだ居たのかクソガキども、早く帰れ!」と暴言を吐く
・息子の友達に鷹の爪を食べさせる
・ゲームをやってる最中にリセットボタンを押してくる


など、エキセントリックすぎる言動が多く、A君の友達はみんなA君の親父が嫌いだった。当然、ぼくもその中の一人だ。
それでも、A君の家はファミコンソフトが多かったので、誰もがA君の親父の存在に耐えながらも楽しくゲームで遊んでいた。

いつもと同じようにA君の家に集まり皆でゲームをしていた時のこと。
A君の部屋は2階にあるのだが、下の階から大きな声、しかも聞きなれている声が聞こえてきた。そう、A君の親父の声だ。どうやらA君のことを呼んでいるようだ。
その声に反応し、階段をおりて下の階に行くA君。1分もしないうちに戻ってきた。どうやら、親父が買い物に行くから付き合わなければならないらしい。
10分くらいで戻ってくるから、と言ってA君は親父と外に出かけて行った。部屋に取り残された僕と、他の友達3人。今、この家にいるのは4人だけだ。
すると、友達の一人であるB君が突然「おい、A君の親父が飲んでる酒の瓶に小便入れようぜ」とわけの分からないことを口走った。それを聞いた他の友達は困惑している。
B君は「だってよお、A君の親父むかつかねえ?なんかやりかえそうぜ」と続けた。やりかえしたい気持ちは分からなくはないが、酒瓶に小便を入れるっていう発想はどこから生まれたのだろう。きっとその場にいた全員が同じことを思ったに違いない。
B君は誰の反応も待たずに、1階に猛ダッシュしてすぐ戻ってきた。その手には大きな瓶がある。恐らく親父が飲んでいる日本酒の便だろう。
B君は慣れない手つきで蓋を外し、床に置く。直後に、ズボンのチャックを開けてブリーフの隙間からアレを取りだす。どうやら本気のようだ。僕を含めた他の友達は何も言うことができず、ただただB君の行動を見守っている。
人に見られているという緊張からか、なかなか小便が出ない。そこで僕は思わず「頑張れ!」とB君に声をかけた。今考えれば酒瓶に小便を入れるのに何を頑張るのかという話なのだが、あまりにも奇妙な光景だったのでそれしか掛ける言葉が見つからなかった。
数十秒ほどしてから、チロチロと小便が出始める。B君は小さくガッツポーズをした。なんのガッツポーズなのかは分からなかったが、誰もそんなことは気にしなかった。
しかし酒瓶は注ぎ口の所が狭く、少しでもコントロールをミスすると床に着弾してしまう。外すと大変なことになると気付いたのか、今まで黙っていた他の友達も「絶対に外すなよ!」「ゆっくりでいいから!」と声を出しはじめた。僕は感じる、僕達はいま、確かに一つになっている。
今まで見た事もないほどの真顔で小便をコントロールして酒瓶に注ぐB君。酒瓶の中に少しずつB君の小便が注がれていく。真顔で小便を瓶に注ぐB君、そしてそれを応援する他の3人。あまりにもシュールすぎる。
そして無事、床にこぼすことなく小便を全て注ぎ終わる。最初は半分ほどしかなかった酒の量が、少し増えたように見える。B君は自分のアレをしまいズボンのチャックを上げると、酒瓶に蓋をして数回シェイクし、それを持って階段を駆け降りた。
すぐさま戻ってくるB君、今まで見たこともないほどの笑顔だ。僕達もつられるように笑みをこぼす。
僕達は今までも一緒にゲームをやったりして遊んではいたが、あくまでも"A君の家に遊びにきた人達"というだけであり、A君(の家にあるファミコンソフト)の存在がなければ一緒の空間で遊ぶことも無かっただろう。
でもたったいま、僕達は本当の友達になることが出来たんだ。僕達は4人で高らかに笑っていた。

数分後に戻ってきたA君とA君の親父。その後もいつも通りゲームをして遊んだ。チャイムが聞こえたあたりで帰ろうとしたところ、A君の親父に声をかけられる。
「お前らなあ、ゲームばっかりやってるから馬鹿なんだよ」といつものように酷い言葉を僕達に投げかけてきた。
それでも僕達は嫌な顔一つせず、ハーイとだけ返事をして靴を履いて玄関のドアを開けた。
そのドアの向う側にあったのは、嫌いな奴にも少しだけ優しくなれた、小学生時代の夕暮れだった。